連帯保証人に代わる「家賃保証会社」の仕組みと役割
■ これまでの賃貸契約と連帯保証人の役割
これまでの賃貸借契約では、万が一の家賃滞納やトラブルに備えて、借主とは別に「連帯保証人」を立てることが一般的でした。連帯保証人とは、借主と同等の責任を負い、万が一借主が家賃を支払えなくなった場合に、その支払い義務を肩代わりする存在です。
しかし近年では、借主の親族が高齢化し、定職に就いていないケースが増えたことから、連帯保証人にふさわしい人を見つけることが難しくなっています。加えて、親族や知人に頼みにくいと感じる方も多く、心理的な負担も無視できません。
■ 家賃保証会社とは?その役割と普及の背景
こうした背景から、現在では「連帯保証人」の代わりに「家賃保証会社(賃貸保証会社)」を利用するケースが増えています。これは、借主が家賃を滞納した場合、保証会社が一時的に家賃を立て替え、貸主に金銭的な損失が出ないようにする仕組みです。
さらに、2020年の民法改正により、連帯保証人の責任範囲が明確化・制限されるようになったことで、オーナー側も保証会社を利用する傾向が高まりました。
ただし、保証会社を利用するには、借主自身の支払い能力に関する審査に通過する必要があります。この審査に合格した方のみが、保証会社と契約することができます。
■ 保証会社の仕組みとメリット
1. 保証会社が家賃を立て替える仕組み
借主が家賃を滞納した場合、保証会社が貸主へ立替払いを行います。ただしこれは“貸主への一時的な立替”であり、後日、借主は保証会社に対して立替分を返済しなければなりません。
2. 親族に頼らずに契約できる
保証会社を利用すれば、連帯保証人を立てる必要がないため、家族や知人に頼む心理的負担が軽減されます。借主だけで完結できる契約形態のため、単身者・高齢者・外国籍の方など、これまで保証人を立てづらかった方にとっても大きなメリットです。
3. 入居審査が通りやすくなることも
保証会社の審査は、借主本人の支払い能力に基づいて判断されるため、「保証会社利用=支払い能力がある」と見なされ、入居審査がスムーズになる傾向があります。特に、保証人を立てにくい環境の方にとっては、審査のハードルを下げる要因になります。
■ 保証会社を利用する際の注意点(デメリット)
1. 初期費用・更新費用が発生する
保証会社を利用する場合、契約時に保証料が必要です。一般的には、家賃+管理費の30〜80%(平均的には50%前後)が初回費用として発生します。また、多くのケースで1年ごとの契約更新が必要になり、その際に10,000円前後の更新料がかかります。
2. 月額費用が加算されることも
保証会社によっては、更新料がない代わりに、月額で家賃総額の数%が「保証料」として加算されることもあります。さらに、家賃が口座引き落としになる場合は、引落手数料が別途必要です。
※なお、これらの費用は契約期間中に家賃を滞納していなかった場合でも返金されることはありません。
■ 保証会社は選べる?指定される?
保証会社は多数存在し、各社で審査基準や料金体系が異なります。ただし、実際にどの保証会社を利用するかは、物件のオーナーまたは管理会社が決定するため、借主が自由に選べないことが多いです。
一部の管理会社では複数の保証会社を取り扱っており、借主の状況に応じて審査通過率の高い会社を提案してくれる場合もあります。
■ 保証会社でも連帯保証人が必要になるケース
基本的に保証会社を利用すれば、連帯保証人を立てる必要はありません。しかし、借主の信用状況や契約内容によっては、保証会社に加えて連帯保証人を求められることもあります。
これは、保証会社が将来的な回収リスクを高いと判断した場合、より確実な回収体制を整えるための措置です。
■ 保証会社の審査について
◉ どんな情報が必要?
保証会社の審査では、借主が安定した収入を持っているかどうかが重視されます。申込時には、下記のような書類提出が求められます:
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年収の申告(申込書への記入)
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源泉徴収票や給与明細(直近3か月分)
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確定申告書、課税証明書など
◉ 審査基準に決まったルールはある?
審査基準は保証会社ごとに異なりますが、「家賃の総額が月収の1/3程度以内」であれば、問題なく通るケースが多いとされています。一方、過去にクレジットカードや携帯料金、公共料金の滞納がある場合は、審査に影響を及ぼす可能性があります。
■ 保証会社の種類と特徴
保証会社は大きく以下の4タイプに分けられます。それぞれ審査基準や特徴が異なります。
【1】信販系保証会社
クレジットカードの信用情報(CICやJICC)を基に厳格な審査を行うタイプです。過去の支払い遅延や滞納歴がある方は、審査通過が難しくなる傾向があります。
主な会社:
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株式会社エポスカード
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株式会社アプラス
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株式会社ジャックス
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株式会社セディナ
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株式会社セゾン など
【2】全国賃貸保証業協会(LICC)系
保証業界の共同組織であるLICCに加盟する保証会社で、過去の契約情報や滞納履歴などを共有しています。過去に滞納歴がある場合、審査に影響を与えることがあります。
主な会社:
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エルズサポート株式会社
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ジェイリース株式会社
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全保連株式会社 など
【3】賃貸保証機構(LGO)系
情報の共有度が比較的低く、独立性の高い審査を行う保証会社。信販系に比べると審査が柔軟とされます。
主な会社:
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日本セーフティー株式会社
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ラクーンレント株式会社
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ハウスリーブ株式会社 など
【4】独立系保証会社
信販系や団体に属さない独自路線の保証会社。審査も独自で、比較的審査が通りやすい傾向です。
主な会社:
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株式会社イントラスト
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日本賃貸保証株式会社
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株式会社宅建ブレインズ など