契約前に必ず確認!「原状回復」とは?
トラブルを防ぐために知っておきたい基礎知識
賃貸物件を借りる際、退去時には一定の費用が発生することがあります。その中でも特に誤解が多く、トラブルになりやすいのが「原状回復費用」です。
ここでは、原状回復の正しい考え方や、契約前に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
まずは「原状回復」の正しい理解を
原状回復費用とは、退去するときに部屋を“元の状態へ戻すため”に必要となる修繕費用のことです。多くの場合、この費用は敷金から清算され、不足があれば追加で請求される仕組みです。
しかし、問題になりやすいのは「どこまで戻せば良いのか」という点です。
例えば、10年住んでいる部屋で「入居当時はどの程度の状態だったか」を明確に覚えている方は少ないでしょう。年月が経つほど、自然な汚れと故意・過失による汚れの線引きが曖昧になり、退去時に思わぬ請求を受けるケースもあります。
また、壁紙・フローリング・水回りの設備などは修繕費が大きくなりやすいため、判断の違いがトラブルにつながりがちです。
だからこそ、“原状回復とは何か”を契約前に理解しておくことが非常に重要です。
ここだけ押さえれば安心!原状回復の判断基準
原状回復の範囲は、国土交通省が裁判例をもとにまとめた「原状回復ガイドライン」で明確にされています。裁判例も積み重ねられ、現在の基準が形成されています。
裁判所は原状回復について、次のように整理しています。
-
通常使用による損耗(経年劣化)を元に戻す義務はない
-
借主の故意・過失、注意不足による損耗の回復が必要
つまり、普通に生活していて自然についた傷や汚れは、借主が負担する必要はありません。これらは「家賃の中に含まれている」と考えられます。
一方で、
・不注意でフローリングに水をこぼして腐らせてしまった
・タバコで壁紙を大きく変色させた
・ペットが柱を引っかいてしまった
など、明らかに通常使用の範囲を超えた損耗については、借主が修繕費用を負担します。
ガイドラインはこの考え方を整理したものであり、「入居時の状態に完全に戻す必要はない」という点が重要なポイントです。
契約前に必ず確認!見逃し厳禁の「特約」
ガイドラインはあくまで基本ルールです。賃貸契約では、これとは別に原状回復に関する“特約”が設けられている場合があります。
特約とは、例えば
「通常使用による壁紙の張り替え費用を借主が負担する」
といった、一般的なルールより借主の負担が増える取り決めのことです。
ただし、こうした特約は何でも有効というわけではありません。裁判例では次のような条件が必要とされています。
-
特約に合理的な理由があること
-
借主が「通常より広い負担を求められる」ことを理解していること
-
借主がその内容に同意していること(意思表示が明確)
つまり、特約の存在を知らないまま契約し、後で高額請求をされるという状況は、本来あってはならないのです。
契約前には必ず、
▶ 原状回復に関する特約の有無
▶ 特約がある場合の負担範囲
をチェックし、わからない点は遠慮せず不動産会社に質問しましょう。
原状回復の要点まとめ
-
原状回復費用…退去時に部屋を一定の範囲で元に戻すための費用
-
自然な損耗(経年劣化)は、基本的に借主の負担なし
-
故意・過失・不注意による損耗は借主が負担
-
特約がある場合は、通常のルールより負担が大きくなることも
-
契約前に必ず「原状回復の特約」を確認すること
原状回復は契約時には見落としがちですが、実際の負担額に直接影響する非常に重要なポイントです。
安心して長く暮らすためにも、契約前にしっかり理解し、疑問点は必ず確認しておきましょう。











